July 21, 2004

会計書であって会計書でない名著 - 田中靖浩氏の会計本

[ ブックレビュー ]

エンジニアリングという仕事を主にしていることもあってか、会計に関しての知識が仕事を通じて入ってくる、という機会がほとんどありません。いや、職業のせいというよりは、自分がその方向を模索することに対して消極的であったということと、コスト感覚が欠落していたことが原因だと思います。

損益計算書 (P/L)、貸借対照表 (B/S) の見方、作り方は研修で若干学んだものの、経営や会計という話になるとキャッシュフロー、限界利益、ROA、ROE、連結決算、時価評価、減損会計....とよくわからないあるいは聞いたことのない単語が次々と出てくる。また P/L や B/S を目の前にして、数字と読むことはできても、その分析結果からなにをすべきかを導き出すことができない。

そんな状況にやや危機感を覚えていたのですが、ふと立ち寄った書店で目から鱗の名著に出会いました。田中靖浩氏の会計本です。経理や会計の仕事を専門としていないビジネスマンに向けてその基本を、読み物として面白く解説した書籍。以下に紹介するように 3 冊あるのですが、1 冊読んで面白かったので一気に全部読んでしまいました。

実学入門 経営がみえる会計―目指せ!キャッシュフロー経営』 は 1999 年に出版された初版の新版で、初版は数万部のベストセラーになったとか。

4532311500.09.LZZZZZZZ.jpg

この書籍の特徴は、会計書であって会計書でないところ。基本的には P/L、B/S、C/S の基本を解説しているのですが、財務諸表の各項目の意味するところや規則といった細かい話はざっくり飛ばして、なぜそれが必要なのか、どうしてそれが必要とされるようになったのか、そしてそれをどう読めばどういう事実がわかるのかといった「実学」的な部分に的が絞られています。

また、日経新聞を引用し実際の社会事例を元に解説しているので、非常にわかりやすい。なぜいまイトーヨーカ堂が好調で、ダイエーが火の車なのか。日産の復活劇を財務諸表で読むと、なにがわかるか。ビートルズの曲が売れるとマイケルジャクソンが儲かるのはどうしてか、などなど。

ほんとに分かりやすく、且つビジネスマン誰もがもつ疑問に明快に回答を用意してくれる名著だと思います。3冊読むのが大変、という方もこの『経営がみえる会計』だけでも読むことをおすすめします。

実学入門 不景気に効く会計(クスリ)―会社の問題をみつける財務会計編』 は『経営がみえる会計』に続き出版された、こちらもやはり読み物的会計書。『経営がみえる会計』ではあまり突っ込んだところまで説明されていなかったいくつかのトピックについて触れられているほか、より広範囲の事例を取り上げています。

実学入門 不景気に効く会計(クスリ)―会社の問題をみつける財務会計編

特に、日本の経営が売り上げ重視から利益重視へ、そして資本利益率重視へと変遷していく過程でどんな失敗があって、どんな痛みを伴ったか、そしてどんな経営をしていた会社が今好調なのかといった点にフォーカスが当てられているのが面白いです。バブル崩壊の傷跡・債務超過に苦しむ大企業、株主至上主義の弊害、米国大企業の粉飾決済、国際会計基準導入による会計ビッグバン...といったトピックに興味のある方はこちらを読むと良いでしょう。

また、一冊目では概要となぜそれが必要になったのかを触れるにとどまっていたキャッシュフロー経営に関して、もうすこし詳しく書いてあるところもポイントかもしれません。

三冊目の『実学入門 儲けるための会計―強い経営をつくる管理会計入門』は、より実用的な内容にフォーカスした書籍で、"見慣れたデータを違った角度" から読む、ということで"財務会計"ではなく"管理会計"を中心に解説した書籍です。

実学入門 儲けるための会計―強い経営をつくる管理会計入門

一般的に企業の"財務会計"は「誰かのために決算書をつくる」、つまり情報の公開義務や納税のためといった法律上の義務から行われる会計ですが、"管理会計"は「自分のための決算書をつくる」、つまり企業の戦略基盤としてデータを生かすために決算書を作る会計のことをさします。こう書くと堅苦しいですが、要は「もっと未来に役立つ会計」ということです。

例えばある製品Xについて、10% の値下げを行うとします。値下げを行った上で以前と同じかそれ以上の儲けを得るためには、販売量を増やす必要があります。果たしてどれだけ販売量が増えればよいでしょう。

ここで「単価を10%下げるんだから、販売量も10%増えればいいのではないか?」と考えた方は、この書籍を読まれるべきです。

この値下げに対する販売量を求めるロジックを解くには、その製品のコストを固定費と変動に分解した上で計算を行う必要があります。その結果、変動費の比率が60% の製品では、10% の値下げに対して実に 33.3 % の販売量増が必要になるという答えが導き出されます。

『儲けるための会計』は、この固定費と変動費に分解して云々という話を中心に、ドンブリ勘定による戦略策定がいかに危険であるかを説き、ではどういった指針でそれを進めるべきかを説いた本です。その答えが管理会計ということですね。

ということで、熱っぽく紹介してしまいましたが、以上三冊どれもおすすめです。会計と聞くと「難しい!」というイメージが先行しがちですが、田中靖浩氏の書籍はそんな「難しい!」というイメージをもっているビジネスマンのことを最大限に尊重して書かれた書籍であり、難しいイメージを払拭してくれること間違いなしです。

会計について学び、周囲の同僚に差をつけてみてはいかがでしょうか。

Posted by naoya at July 21, 2004 07:55 AM | トラックバック (2)  b_entry.gif
トラックバック [2件]
TrackBack URL: http://mt.bloghackers.net/mt/suck-tbspams.cgi/1140
実学入門 経営がみえる会計―目指せ!キャッシュフロー経営/田中 靖浩 05134
Excerpt: 著者: 田中 靖浩 タイトル: 実学入門 経営がみえる会計―目指せ!キャッシュフロー経営 ★★★★☆ 非常に分りやすい本。 大学...
Weblog: 分譲マンション屋の読書日記
Tracked: May 18, 2005 11:11 PM
実学入門 不景気に効く会計(クスリ)/田中 靖浩 
Excerpt: 田中 靖浩 実学入門 不景気に効く会計(クスリ)―会社の問題をみつける財務会計編 ★★★★★ 実学入門 儲けるための会計―強い経営をつくる管理...
Weblog: 分譲マンション屋の読書日記
Tracked: July 11, 2005 01:18 AM
コメント [5件]

ごぶさたしておりますね。
『決算書がおもしろいほどわかる本』(石島洋一)
も良いですよ。一冊に小さくまとまっていて。
「あれなんだったっけ?」を思い出すハンドブック的にも使ってます。

[1] Posted by: zerobase at July 21, 2004 02:01 PM [返信]

お! そうですか。熱は冷めないうちになんとやら、読んでみますね。

[2] Posted by: naoya at July 21, 2004 02:21 PM [返信]

買っちゃいました。よさげですね。
これ系の本はムズイのが多くて。。

[3] Posted by: maho at July 24, 2004 01:40 AM [返信]

うん、これはまじおもろい。おすすめ。

[4] Posted by: naoya at July 24, 2004 03:15 AM [返信]

3冊買わせていただきました。

# ちゃんとアフィリエイトで

ざっくり経営がみえる会計を
読んでみましたが、大変おもしろく
かつ大変役に立ちそうです。紹介
ありがとうございました。

[5] Posted by: ryu at August 9, 2004 03:13 AM [返信]
コメントする









名前、アドレスを登録しますか?