May 05, 2004

『仕事のなかの曖昧な不安』 を読んで。

[ ブックレビュー ]
若者が転職する理由として、若者の意識の変化や家族関係の変化の影響を指摘する声を耳にする。若者の仕事に対する考え方や価値観が変わり、昔にくらべ「勤め続けることへのこだわりや、それを大事と考える意識が希薄になったという。
(中略)
たしかに、若年者の意識や家庭環境の変化の影響は無視できないものだろう。しかし、若者が転職に踏み切る理由は、本当にそれだけなのか。 もっと自分から転職や失業に踏み切らざるを得ない別の理由がある。
仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在』 P.15 プロローグより引用

仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在』という本を読みました。面白かったです。

仕事のなかの曖昧な不安―揺れる若年の現在

これまで世間では雇用問題として中高年の失業を重要課題として扱ってきましたが、実際にデータを元に掘り起こしてみると、中高年の雇用事情は 90 年代に入って以降ほとんど変化しておらず、一方で高齢社会の進展のなかで見過ごされている若年の雇用問題が深刻な状況に陥っているのだそうです。

その様子は書籍の中で頻繁に用いられるショッキングなデータの数々が物語っています。例えば、

・2001年7月に日本の失業率は史上はじめての 5% 水準を記録。
・15 〜 24 歳男性の失業率は 12.4% (2001年9月で前年同月に比べ 1.9% 上昇)
・45 〜 54 歳男性の失業率は 3.6% (前年同月 0.1 % 増にとどまる)

といったデータなど。

そして、この若年失業率の高さ、同一の職場への定着率の低下を招いている根本の原因は、中高年雇用のいっそうの維持を保証する「既得権」の強化が若年の就業機会を奪っていくことにあると著者の玄田有史氏は説明します。

・「終身雇用」の強化
・定年の延長や廃止
・解雇される側に有利に働く(判定法理のため変更が難しい)解雇権

などが既得権の代表例だそう。世間一般的には終身雇用の崩壊なども叫ばれていますが、データを取ってみると実状はむしろ逆。そして社員の中高年化が進んでいる大企業ほど、中高年の雇用維持の代償として新卒の採用を抑制しているそうです。

皺寄せの結果、不足しがちな若者に対して大量の雑務が押し付けられ、やりがいを感じられる仕事、誇りや満足を感じることができる仕事に出会えるチャンス、業務を通じて能力を伸ばす機会が次々と奪われていくという悪循環に陥っている。

パラサイトシングルという単語で片付けられてきた若者の雇用問題の実態は、こんなところです。

僕は社会人になって今年で3年目ですが、この2年の間に職場で体験してきたことや、周囲から聞いている様子を総合すると、書籍のテーマにかなり共感できることが多かったです。一方で、僕の働くインターネット業界(?)は非常に若いメンバーで構成されていることもあって、その他の業界で働く同期の友人なんかに比べるとかなり恵まれた職場環境なんだと実感することもしばしば。(若いエネルギーが業界を動かす原動力だとはっきり認識している年配の方が多いのも、いいところかな。) その理由をはっきりと知ることができたのは結構な収穫でした。

本書を通じて個人的に思ったのは、大人のせいとわかっていてもそれを盾に自分を正当化しない強い信念が、なんだかんだでやっぱり大事かなあということ。データが証明するそれらの事実を分かったとしても、結局は行動を起こさないかぎりそれは変わらないわけです。

この本でもう一つ面白かったところは、第7章の「幸福な転職の条件」。それまでの若年雇用問題に関する話題からちょっと離れて、満足な転職をした人たちに見られる共通項を探し出すというテーマで書かれた章です。結果、「会社の外に信頼できる友人・知人がいるかどうか」が鍵になるとのこと。これだけだと何やら短絡的な結論に聞こえるかもしれませんが、

・転職先の友人と事前に密接に話し会う機会を持つことで「こんなはずではなかった」と感じることを減らすことができる。
・公共や民間の職業紹介期間から得られない、定性的な情報は友人からしか得られない。
・違う職場にいる友人の仕事や働き方に転職後の自身の姿を投影し、自分の転職成功の可能性を想像する。

などなど、思いあたる節の多いポイントを付きつつ論旨が展開されていくので、結構納得できました。(例によってデータがそれを証明しています。) この中で、僕が以前にちょっと話題にした 'マーク・グラノヴェッター「弱い絆の強み」' (社会的絆によって形成される社会ネットワークにおいては、古くからの友人といった、自分にとって強い絆で結ばれている人物よりも、ちょっとした知り合いのような弱い絆で結ばれた人物のほうが、自分の人生に与える影響が大きいという理論) なんかも取り上げられていて、へえと思いながら面白く読めました。

Posted by naoya at May 5, 2004 12:13 PM | トラックバック (1)  b_entry.gif
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コメント [5件]

この本は1年前くらいに、夢研の参考書でしたよ。

わたくしも読んだのですが、あのときからも一向に事態は変わっていないようで、、。

それから二束のわらじモデルが出てきました。くわしい話はまた今度ー。

[1] Posted by: zhongcun451 at May 7, 2004 01:40 AM [返信]

この前、去年までいた会社の上の方の人と、立て続けに話をしましたが、みんな問題意識を持っているにもかかわらず、動きをとらないまま(とれずに)時間だけが経過しているように見えます。

問題意識「プラス」行動が、この負のスパイラルから抜け出す方法の一つでしょうか。

[2] Posted by: nob seki at May 8, 2004 01:04 PM [返信]

問題意識を持たれているという点では、まだ未来はありそうですね。

行動を起こすのには大量のエネルギーが必要かとは思いますが。

[3] Posted by: naoya at May 8, 2004 02:19 PM [返信]

個人的にこの問題は以前から気になっています。若い人の雇用機会が創出されないというのは、即ち将来の日本の競争力自体が失われるということでしょうし。

比較的にすぐ取りやすいソリューションとして、近年ではインターンの採用を積極的に手がけています。メディアに関心のある優秀な方は是非ご紹介頂ければと。

[4] Posted by: mitarai at May 13, 2004 12:17 PM [返信]

そういう不安が逆にエネルギーになればよいのですけどね。

インターンですか、適任者いたら紹介しますね。 :)

[5] Posted by: naoya at May 14, 2004 12:19 PM [返信]
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