December 12, 2003

企業情報を XML で... XBRL

[ XML ]

二日ほどかけて、経営シミュレーション研修なんてものを受けました。流通産業を主とする企業の経営をシミュレートするゲーム(ゲームというほどエンタテイメント性の強いものではないのです)を使い、5つのグループで仮想市場で競争を行って、その過程の中で数値データに基づいた企業分析や経営戦略の立て方の基礎を学ぶというものでした。

そんなシミュレーションを題材としながら損益計算書や貸借対照表、キャッシュフローなど各種財務諸表の分析の仕方なんかも学びました。これまでこういった企業の経営情報に関わる書類に関しては、見てもぜんぜんわからず逃げ回ってきたのですが、仮想の企業経営体験を通じて学ぶことができたので、今回は逃げずに理解を深めることができました。とは言っても、まだまだド素人あることには変わりないのですが。

折角学んだ知識を腐らせてしまう前にと思い、インターネット業界の他社の IR 情報なんかを少し見てみました。今年特にバブリーな株価の様相を見せたヤフー、楽天、エッジ(ライブドア)など、いきなり派手なところから手を付けてみました。

分かりやすいところからとういことで、各社の昨年度の損益計算書とにらめっこ。損益計算書には売上高や売上高原価、営業利益や経常利益などの数値が金額ベースで載っているのですが、これを金額ベースのまま見てもこのぐらい儲かった、このぐらい利益が出たとかいう程度にしか分析できないとのことで、計算して「○○率」といった割合ベースの数値にして見たりします。例えばヤフーの昨年度売上高は 59,095 百万円で、経常利益が 23,524 百万円なので、経常利益/売上高から算出される売上高経常利益率は 39.8 %。(ごつすぎ)

こんな具合で計算機片手に数値と格闘するわけですが、損益計算書一つとっても記載されている情報は共通しているところもあれば、独自のものもあったり、また、ドキュメントが PDF や HTML で公開されていたりで、分析するには「こことここの項目を電卓に打ち込んで...」と結構アナログな方法で計算をしたりする必要があります。

最終的には表を作って、各社の利益率や原価率などを横ならべにして比較するわけで、計算して算出される値は同一の式から導き出されます。にも関わらずわざわざ目で見た数値を手入力で計算して...などと単調な作業。これを繰り返すうちに、ドキュメントのフォーマットが標準化されてて Programmable なフォーマットになってれば全部自動化できて、公開する方も分析する方も幸せなのになあ、と思ったのでした。となればやはり XML ベースで標準化された文書になるのが、最適解だなと。

XML になっていれば、それを変換することで PDF や HTML など人が目にする文書に変換するのもわけないですし、数値データをプログラムが解釈して、単調な繰り返しになる分析のための計算やグラフ化を全自動化させることができます。企業名で検索して、専用のクライアントソフトに放り込むだけで、その企業の財務情報の分析レポートが出力される、みたいな。また、XML Web サービスから扱うことで、企業間で信用情報などの交換の自動化などが可能で、企業間取引におけるコストの削減や時間の短縮に大いに貢献するだろう...などなど。

この手の話題に素人な僕が思いつくような話ですから、この類の技術はすでに世界各国で進められているのだろうと思いぐぐって見ると、すぐに見つかりました、XRBL (eXtensible Business Reporting Language)

eXtensible Business Reporting Language (XBRL) brings the publication, exchange, and analysis of the complex financial information in corporate business reports into the dynamic and interactive realm of the internet. XBRL provides a common platform for critical business reporting processes and improves the reliability and ease of communicating financial data among users internal and external to the reporting enterprise.

素晴らしい。思い返すと以前に書籍などでも何度か聞いたことがあったようななかったような感じなのですが、実際問題、XBRL 仕様策定の現状や普及状況、応用事例などはどうなっているんだろうかということで、もう少し色々見てみると、有用な文書がごろごろと。

2001 年初頭ごろに提案されて、既に XRBL 2.0 Specification 最終リリースと称される仕様が公開されているとのこと。仕様書があったのでほんのちょっと目を通してみましたが、予想通りかなりヘヴィ。こりゃ、ちょっと参考にする程度にかじってみるぐらいじゃ、全然意味がなさそうです。さすがに B2B。

2002/11/1 ということですでに一年以上まえの記事なのですが、

XBRL Japanでは、すでに有価証券報告書、決算公告の辞書草案をホームページ上で公開している。また実データ部分に関しては、米国マイクロソフト社、ロイター社などがXBRLでの財務情報公開を始めている。現在、日本でXBRLへの取り組みを表明しているのは民間企業に限られているが、海外ではオーストラリア金融監督局や米国の連邦預金保険公社など政府系機関の採用も相次いでいる。

といった話も。

各種アプリケーションサーバなんかは XBRL 対応を謳っている製品もぼちぼちあるようです。富士通研究所では XBRL Tools として、Validator やインスタンスエディタ、それから、XBRL の語彙辞書にあたるタクソミノ タクソノミのエディタなんかも公開されています。

すでに仕様も固まり、実装も色々と世に出始め、少ないながらも XBRL で財務情報を公開する企業も出てきているというところでしょうか? Amazon で XBRL で検索したところ洋書が 3 件、和書が 2 件。

先に引用した NIKKEI NET BizPlus の記事の終わりには

XBRLはデータ利用実績がまだ少なく、仕様そのものと辞書部分が十分に洗練されていない。XBRL導入のメリットがユーザーにとって明確に示されていないために、実際に財務情報をXBRLで作成する企業が少ないことが原因である。しかしこの問題は、XBRLを利用した基礎的なツールがかなり整備されてきていることで次第に解決されつつある。いまソフトウェアベンダー各社は、それらのツールを利用して、XBRL導入の効果が目に見えるようなアプリケーションの開発を急ピッチで進めている。

といったことが書かれています。1年経ってどのような普及状況にあるのかは、もう少し調べてみる必要がありそうです。この雰囲気だと、僕のような一庶民が XBRL の恩恵を受けることになるのはもう何年か先のことになるのかな。たくさんの企業が標準化された XML 文書で企業情報を公開することで、個人投資家の投資効率を高めて株式市場の活性化を! とか素人ながらに言ってみたりするテスト。(僕は投資とかも、全然素人でまだまだこれからなのですが。)

Posted by naoya at December 12, 2003 02:42 AM | トラックバック (4)  b_entry.gif
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XBRLが普及すれば、財務関係の勉強がしやすい環境になるだろうなぁ。
Excerpt: 企業情報を XML で... XBRL NDO::Weblog: naoyaさんが XRBL (eXtensible Business Reporting Language) についてのEntryをアップされています。 僕も会計情報のメタデータ化?には興味を持っていて http://www.salesaid.jp/mt/archives/000122.html でちょっとXBRLに関す...
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コメント [5件]

いつも愛読させて頂いております。
XBRLのお話、大変勉強になりました。
IR情報はXML化するのが適した情報の最たるものの一つですね。ちなみにアメリカでは ValueLine や Mergent Online といったIR情報(P/L, B/S, Cash flow)を取得する情報サービスをしている会社がいて、これらのサイトを利用するとExcel形式で過去10年以上の決算情報を取得できます。株式投資するときは長期分析が必要になるため、この情報を利用しています。
日本ではXML, Excelなどの形でIR情報を提供しているサービスがあるかは?ですね。

[1] Posted by: myasuda at December 12, 2003 08:01 AM [返信]

XBRLがどこまで対応しているのか分からないので、なんともいえないですが、管理会計まで踏み込める状況になっていれば、需要が高まるような気がするのですが、現状はどうなんでしょう。

また会計基準は、マイナーな部分はコロコロ変化するので、その辺りの計算も自動化できるように、そういったデータも入れられる形で社内的に作成できるようになっているのであれば、ニーズは高くなるような気がしますが…。

[2] Posted by: nob seki at December 12, 2003 10:08 AM [返信]

タクソミノのエディタとありますが,タクソノミでは?

[3] Posted by: ddx at December 12, 2003 10:53 PM [返信]

ども。おひさしです。

B/SとかP/Lみたいにすでに長い時間をかけて合意形成されてきたものは(セマンティクスが標準化されているため)簡単でわかりやすく扱いやすいのですが、所詮サマリーデータなのでXMLであることのパワーはそれほど発揮されません。世界中にある企業が四半期単位で生成するのがインスタンス数の上限となる小さな小さな市場です。

XBRLで本当にビジネス的な価値が見込めるのは会計業務の中でもよりリアルタイムでトランザクショナルな部分なのですが、こっちは例えば勘定科目ひとつとっても標準化作業が難題になるのがわかると思います。

そうすると、最初のターゲットは文化的親和性の高い(勘定科目が揃えやすい)企業グループの連結会計とかになるでしょうね。

このへん、実はちょっとアイデアがあるのですが、うちのビジネスとしては今のところPendingです。XBRLの仕様にクセがある(Linkbaseとかが無駄に実装の敷居を上げている)からというのはここだけの話ですが。

[4] Posted by: kenn at December 13, 2003 12:45 AM [返信]

みなさんコメントありがとうございます。勉強になります。

会計業務には全然、疎いのでどの辺の情報が投資家にとって一番クリティカルなのかという点が分かってないのですが、nob seki さんや kenn さんのお話からいくと、やはり流動的な部分や標準化が辛い部分がたくさんあるのですね。

標準化という作業は、標準化されていないものに対して制限を加えるということだと思っています。制限を加えてもバランスが取れる情報というのが、文化的親和性の高い部分なのですね。

もうちょっと色々調べてみようと思います。

お金について、もっと勉強しないとなあ。

[5] Posted by: naoya at December 14, 2003 12:26 AM [返信]