セマンティックWebというコンセプトがずっと生き残っているのは、Webの世界で何かを成し遂げた偉い人たちの言うことだから正しいに決まっていると思い込みたがる民衆心理の亡霊のようなものだ。そんな価値は、少なくとも大々的に吹聴されているような次元では存在しないのである。そろそろ目を覚ましたほうがよい。
江島さんウェブログにてセマンティックウェブ懐疑論。以前に広尾で開催された Link Knowledge! で平田さんが「セマンティックウェブを信じるのはもう止めた。セマンティックウェブというコンセプトだけが取り上げられて、一向に実現されない」というようなことを言っていたのを思い出しました。今日の江島さんのコラムも、セマンティックウェブの疑わしい部分を掘り下げて、偉人が言ったからというだけで盲目的にそれを信じてはいけないということを強く訴えています。とても面白い。(しかし、非常に文章表現が非常に巧みです。読みながらちょっとした高揚感を味わいました。)
結局のところ、XML などのメタデータは"メタ"と言えど、あくまで何かしらの事象を客観的に表すものであることには変わりなく、それ故にメタデータの元になるデータとの因果関係が明確に存在するものでなければ表現は難しいのではないかと言うことだと思います。しかし逆に言うと、セマンティックウェブというのをもう少しスコープを狭めて解釈し、5W2H の中でも客観性の高いデータとなり得る Who や When、Where に的を絞ったシステムというのはやはり実現しやすいのでしょう。
今日の日経新聞の記事に以下のようなものがありました。
富士通は、営業担当者らが訪問先で顧客の質問やクレームに最もうまく対応できる社内スタッフを自動的に探し出し、即座に連絡をとるシステムを開発した。パソコンに検索したいテーマを入力すると、そのテーマを手がける部署のスタッフの人脈図が示され、その中から連絡が取れる人物を割り出し、動画面でやりとりする。当面は社内利用し、その後、企業の営業用IT(情報技術)ツールとして売り込む。
僕の記憶が確かならば、このシステムの基盤には RDF が用いられており、いわゆるセマンティックウェブのサブセットのような形で応用されたものだったと思います。(以前の日経インターネットソリューションに紹介されていたシステムだったと思います。)
この辺を考えると、案外 FOAF あたりを使った次世代出会い系システムなんかが、早い段階でコンシューマ分野で姿を現すセマンティックウェブ(っぽい物)の実現型だったりするんじゃないかなあとか、思ったり思わなかったり。
なにはなくとも、セマンティックウェブというだけで何やら大きな夢を抱いてしまわぬよう、しっかりと動向を見つめていくことが必要なんだなと思います。一時期のウェブサービスバブルを覚えている人なんかはきっと、この辺りに懐疑的に違いありません。
あんまり関係ないのですが、つい先日、某所で江島さんにお会いしました。小学生のときにアセンブラでプログラミングをしてたとか。おいおい。僕と同じぐらいの年齢だったのですが、頭の回転の速さと言い、これまでに歩んできた道のりといい、ただただ圧倒されるばかり。うーむ。