August 23, 2003

『新ネットワーク思考』に記述された「六次の隔たり」の背景

[ ブックレビュー ]
1967年にハーバード大学教授が提唱した “6 degrees of separation” 理論を、コロンビア大学の教授がインターネットのメール・リレーで検証実験。結果は到達率 2% で玉虫色としながらも、到達した場合は 5-7 hop でメールがターゲット・アドレスに届いているとの事で、成立した場合には理論が正しいとの評価。

少し前のエントリですが、南さんの B-log Cabin TP にて "6 degrees of separation"、いわゆる「六次の隔たり」についての話題がありました。六次の隔たりというのは、自分を起点にして、世界中の誰とでも、六人の知人の輪を間に介せば繋がることができるという理論。

例えば僕と、続編が決まったドラマ「トリック」のヒロイン、仲間由紀恵を繋げてみるとしましょう。僕の友達に大沢たかおと親戚の子がいて、その子は実際に大沢たかおとは面識があるのだそう。大沢たかおはドラマ「昔の男」で阿部寛と共演している。阿部寛はトリックで仲間由紀恵と共演しているから、「僕→友達→大沢たかお→阿部寛→仲間由紀恵」という輪になり、仲間由紀恵とは「四次の隔たり」で繋がることができるという結果。

(僕は知らないけれど)仲間由紀恵と大沢たかおは何かドラマで共演したかもしれないし、同じ業界で働く二人なので知り合いの可能性は高い。従って、誰と誰が知り合いなのかというマップが手に入るのであれば「五次の隔たり」を更に縮めることも可能だといいます。

この六次の隔たりの概念は1967年ハーバード大学教授スタンレー・ミルグラムによって発見されました。しかし、それよりも約30年前の1929年にハンガリーの文学者フリジェシュ・カリンティが、46冊目の著作『同じものはひとつもない』の中の短編「鎖」の中で、まるで六次の隔たりが発見されることを知っていたかのように、次のような話を記していたそうです。

今日、地球上の人々はかつてないほど互いに接近し合っている。そのことを証明するために、仲間の一人がある方法を提案した。その男は、地球上にいる十五億の人から一人の名前を挙げてみたまえと言った。彼はたった五人の知人の輪を介して名前の挙がった人物にまで鎖をつないでみせると言うのである。

言うなれば、カリンティがその作品で活字にしてみせたのは「五次の隔たり」だったというわけです。

で、何で僕がこんな話を知っているかというと、つい先日 'ウェブ・ネットワークとウェブログを支えるオープンな技術' 話題にした本、『新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く』にこの「六次の隔たり」に関する深い洞察が記述されていたから。

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先のカリンティの作品も、この書籍から引用しました。

人と人とのつながりによる社会ネットワーク、細胞と細胞の生態系ネットワーク、サイトとサイトがリンクで繋がるウェブネットワーク、すべてのネットワークに共通する普遍的な法則とは一体なんなのか、それを解き明かしていくうちに様々な発見があったという内容の本になってます。六次の隔たりや、ランダム・グラフ理論などをその起点として、様々なネットワーク理論、社会学、数学、物理学、生物学、薬学あらゆる分野の学問の専門家たちによる研究とその成果によるネットワークの真理がこの本で明らかにされます。

とても面白かったし、勉強になる本です。インターネットなどのネットワークを商売の土壌にしている技術者はもちろん、経済、マーケティング、医療、あらゆる分野に関する発見が凝縮された書籍なので「ネットワーク」という言葉にあまり興味のない方にもおすすめの一冊です。

Posted by naoya at August 23, 2003 02:35 AM | トラックバック (7)  b_entry.gif
トラックバック [7件]
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コメント [4件]

naoyaさん、今日もいい情報をいただき感謝。早速、アマゾンで「新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く」をゲットしました。この「六次の隔たり」を知ったのは伊藤穰一さんの論文「創発民主制」の中でです。
http://ellington.gel.sfc.keio.ac.jp/nsly/nslywiki/index.php?EmergentDemocracy

これからのネットワーク社会を考えるいいヒントがここにはありますよね。今から本の到着が楽しみです。

ところで自分のブログでやっているIM対話のブログコンテンツの実験。友人のTKM以外にも対話の相手を広げてゆきたいと考えています。普通はIMって友人としかやらないので始めての人とやるときにはどういう結果になるかというのも試してみたい。
一度お時間のあるときにお相手してくれませんか?

[1] Posted by: ノネコ at August 23, 2003 01:13 PM [返信]

40の6乗でおよそ41億です。
したがって、一人当たりの友達の数が40人くらいいるとして、みんなで友達全員にマルチキャストで転送すれば、
大体地球の人口くらいにはなりそうですね。

チェーンメールも40人に送らないと不幸になりますとかすると。。。。
アフリカの人にも届くかな(笑)

[2] Posted by: missy@物理屋引退しました at August 23, 2003 11:42 PM [返信]

naoya さん

こんにちは。この実験、メールで検証した様ですが、blog 人口が世界的にさらに増えてくると trackback でどこまでリレーできるか、といった形でも試す事が出来そうですね。blog 間のつながりを試す面白い実験になるかもしれません。(blogrolling のリストのつながりを調べたりすれば、実は既に殆どの blog が誰かしらの blog 経由つながっていたりするのでしょうけれど。)

人間の輪とは意外なところでつながっている事が確かに多くて、初対面と思った方が実は良く会っている知人の知り合いだった、等ということが、最近はかなり多いですね。日本の IT 業界がまだまだ狭い、ということなのかもしれないですけど。(笑)

[3] Posted by: minami at August 24, 2003 08:51 AM [返信]

ノネコさん

この本はほんとにおすすめです。僕が最近読んだ本の中では一番面白かったですね。

IM の件は、いつでも遠慮なく誘ってください。夜に MSN にログインしているときは、大概ウェブログ巡回中だったりするので、是非。

missy

物理屋引退しちゃったの? 今は何してるんです? (笑) 40 人に送ったとしても、送る人が増えるにしたがってダブリが多くなって、結局ハブになる人に大量のメールが届いて、あまりメールの通数がほとんどない人には全然届かないという状態になるんじゃないかな。この本が記述してるのはまさにそれで、それこそがスケールフリーネットワーク。べき法則に従うわけだから、統計力学や量子力学に直結するので、物理屋さんが読むとなお面白いと思うよ。

minami さん

意外なところでつながってるってのは、ほんとに最近良く実感しますねえ。blog を始めてからそれを顕著に感じるようになりました。最近だと、bulknews の宮川さんと僕の大学のサークルの先輩が知り合いだったっていう発見がありましたが、そんな感じです。IT業界は狭いですけど、狭いからこそ色んなところで色んなかかわりがあって、そのエピソードを辿っていくだけでも結構面白かったりしますね。(笑)

[4] Posted by: naoya at August 25, 2003 01:32 AM [返信]