『新ネットワーク思考―世界のしくみを読み解く』という本を今読んでます。この本が対象とするネットワークは、インターネットなどコンピュータの世界のネットワークに留まらず、生態系を繋ぐ食物連鎖のネットワークや、人と人とを繋ぐ社会ネットワークなど、「つながり」によって実現される広義のネットワークを指しています。で、それを科学的に捉えると何が分かるか、ってな内容の本です。
この本を読みながら、リンクで構成されるウェブというネットワークと、ウェブログの持つ機能っていうのはどう関係してくるんだろうとちょっと考えてみました。
P.83 'ずば抜けて多くのリンクをもつ「ハブ」' から以下の記述があります。
サイバースペースは究極の言論の自由を体現している。好むと好まざるにかかわらず、ウェブページのコンテンツを検閲するのは困難だ。いったん掲載されれば、何億という人がそれを目にすることになる。これは前代未聞の表現の自由であり、公表にかかるコストの低さとあいまって、ワールド・ワイド・ウェブを究極の民主主義の場にしている。なにしろ誰の発言も、同等の機会を持って人々の耳に届くのだから・・・・・・と、憲法学者や大衆受けを狙ったビジネス雑誌は主張する。もしもウェブがランダムなネットワークなら、彼らの言い分は正しい。だが、現実派そうなってはいないのだ。ウェブのマップを作るというわれわれのプロジェクトから得られた結果のなかでもっとも興味深いのは、ウェブには民主主義など微塵もないという現実だろう。ウェブのトポロジーは、われわれが全ドキュメントのほんの一部にしか接することができない仕組みになっているのである。ウェブに関して重要なのは、もはや個人の意見が発表できるかどうかではない。発表したいならすればよい。いったん掲載されれば、インターネットのリンクを介して世界中の人たちがすぐにでも読めるようになる。しかし問題は、何十億というドキュメントのジャングルにあっては、たとえあなたがウェブ上に情報を掲載しても、いったい誰が気づいてくれるのかということだ。
ここで "もしもウェブがランダムなネットワークなら" という一文があります。
数々の実験の結果、ウェブを含むネットワークのトポロジは「ノードとノードが不規則に繋がるランダム・ネットワーク」ではなく「優先的選択と成長により一部のノードが極端に大きな繋がりを獲得するスケールフリー・ネットワーク」であるということが実証されたと。故にウェブはランダムなネットワークではなく、(Yahoo! や Amazon.com のようなハブとなるサイトを中心とした) スケールフリー・ネットワークなのだということです。(なお、インカミング・リンク数を指標とした場合にランダム・ネットワークはポアソン分布に、スケールフリー・ネットワークの分布は「べき法則」に従うんだそうで。)
また、
もしもウェブがランダムなネットワークなら、見てもらう、聞いてもらうチャンスは誰もが平等に持っている。ところが現実には、ある集団的な作用により、みんながリンクするサイト、ハブが生まれているのである。ハブは非常に目立ち、ウェブ上のどこにいてもすぐに見つかる。ハブに比べれば、それ以外のノードは見えないに等しい。一つや二つのサイトからしかリンクしてもらっていないページは、事実上、存在しないも同然である。検索エンジンでさえ、そんなサイトは相手にしないのだ。
と記述されており、それ故に "ハブの存在はサイバースペースは平等だというユートピア幻想への最強の反証になる。" という論が展開されてます。
ウェブログって何がいいの? って話になったときに良く「(ツールによって)誰でも簡単にウェブで情報を発信できるようになるからだ」というのを良く聞くのですが、確かにそうだと思う反面、何かちょっと胡散臭さのようなものを感じていました。情報を発信しても、誰もそれをキャッチしなければ結局発信してないのと一緒じゃないのとか、ウェブログだからといって人気のあるところに人が集まるスパイラルができて、人気のないところはそのままって原理は覆されるわけではないだろうとか。「個人が誰でも簡単に情報発信できる」というだけで「ジャーナリズムの表現の場」とか「民主主義の実現の場」といった話に直結させるのはいささか飛躍しすぎなんではないかと。
しかし、ウェブログだから「ジャーナリズムの表現の場」とか「民主主義の実現の場」ってすぐには言えないにしても、個人が普通に情報発信するよりは、ウェブログは幾分(ジャーナリズムや民主主義っていう方面にとって) 有利な状況だろうというのがここ最近の僕の見方。それを支えている物の一つとしてオープンな技術というものがあると思ってます。
先の書籍が示すように、ウェブは優先的選択と成長が渦巻くスケールフリーなネットワークであり、いかにしてそのネットワークに参加して、ネットワークの中での存在の大きさの指標となるリンクをいかに獲得するかが鍵になります。ウェブログツールによっては、その「参加する」方法と、「リンクを獲得する」方法がシステムとして提供されています。これらのシステムを支えるのは、独自仕様の技術ではなく、仕様が公開されたオープンな技術です。
例えば、「参加する」仕組みとして Ping があります。Weblogs.Com などの Ping サーバへ、ウェブログツールは更新時に「更新しました」という知らせを送ることが可能となってます。Ping サーバは各ウェブログから集めた情報を XML で公開してます。巷のウェブログ検索エンジンやメタブログサービスはその情報を受け取って、サービスに役立てています。
BlogShares はウェブログサイトの人気度をネタにした株価市場ゲームのメタブログサービスですが、これを初めて見たときに興奮したのは、特に自分がアカウント登録などで知らせなくても、勝手に僕のサイトを巡回して拾って遊び道具として活用してくれていたという点です。(過去のエントリ 'BlogShares って何だ') 自分が意識しなくても、ちゃんとネットワークに仲間入りしているというわけですね。いわば Ping サーバはネットワークへの入り口を開放したものと言えそうです。
一方「リンクを獲得する」仕組みとして TrackBack があります。TrackBack を積極的に活用すれば、インカミングリンクを増やすことが可能です。ウェブログ間のつながりを実現する一つの手段が TrackBack です。
以前、ニュースコレクターの開発者の方が TrackBack について以下のような解説をされていました。
TrackBackとは、あるサイトの記事に関して、「僕もその記事の感想とか、関連する文章を書いたよ!」という報告を、Coolに行なうための機能です。内容的には、掲示板に「僕もその記事の感想を書きましたので、読みに来てください」と書くのと同じなのですが、CGI経由でPtoPでその報告を行なうことで、Coolでかっこよい気分にさせてくれます。
人がマニュアルでやったら面倒なことや億劫なこと、マニュアルではできないこと、マニュアルではやりたくないことをシステム化するのがエンジニアリングですが、Weblogs.Com や TrackBack はまさにそれ。掲示板に自分のサイトの宣伝をひたすら書き込むことでもネットワークに参加することができるし、リンクを獲得することができます。でも、じゃあ積極的にそれをしたいと思う人はあまり居ないし、ウェブの世界ではそういった行為は嫌われる。でも、それがシステムによって自動化されていると、意識せずにそれが行われたり、手軽にそれが行われるようになります。敷居が下がるとでもいいましょうか。
結果、「痒いところをシステム化したから、前に比べたらちょっとだけ平等になったし、少しだけ民主主義とかじゃナーナリズムの表現とかも実現しやすくなったよ」という感じですね。
ただ、今のところ Ping サーバの存在や TrackBack がネットワークの中で、そのノードの位置づけを劇的に変化させる要因になってるということはないと思います。でも重要なのはそこではなくて、Ping サーバや TrackBack などは仕様が公開されているからこそ、他者との繋がりによって実現されるネットワークにおいて、その根本をくすぐるシステム化が可能だったり容易だったりするという点だと思ってます。
今後ウェブログがそういった場として活用されるためには、テクノロジのサポートは必要不可欠なのではないでしょうか。それはクローズドなものではなくって、オープンなものであった方が良いであろう事を疑う余地はありません。
May the open technology be with blog. ウェブログがオープン・テクノロジとともにあらんことを。
僕の感覚だと、Yahoo=情報紙、Google=タウンページってイメージがあって、WEBをGoogleから見る分には十分ランダムだと思っています(表示順とかは別にして)。
登録数が膨大になりぎてYahooの一部が役に立たなくなってる、Googleで目的のページをずばり探すにはそれなりの技術が必要、掲示板に書かれた告知や宣伝って結構うざい、とかありますが、Weblogの仕組みも現状のまま普及したら同じようになっちゃうのかなぁ、と思いました。
来てもらうためにお客が払うコスト(金、時間、手間など)を、いかに0に近付けさせるか。
テクノロジとシステム(仕組み、使い方)が今度どこまでこれを実現できるかが非常に楽しみです。
結局「顧客満足のためには手作業が一番よい」というオチだったりして(笑)
> Weblogの仕組みも現状のまま普及したら同じようになっちゃうのかなぁ
なんかその危惧は少しありますね。情報の単位が記事として一貫されることで、以前よりはましな状況にはなりそうだと思いますが、それを根底から覆すほどの技術ってのはまだもう少し先なのかなーと。
> 結局「顧客満足のためには手作業が一番よい」というオチだったりして(笑)
あながち笑い話でもなかったりして。
検索エンジンと言えば、昨日 On Off and Beyond (http://blog.neoteny.com/chika/) で渡辺さんが紹介されていた Vivisimo というエンジンがすごいっす。
何か検索して、検索結果の左側にご注目。検索結果がクラスタ化されてます。
[2] Posted by: naoya at August 13, 2003 02:36 AM [返信]