July 12, 2003

ネットワークゲームの中に生まれるローカルルール

[ ゲーム ]
ニューヨーク発――ジェレミー・チェイスさんは、敵対する連中から金をゆすり取っていることを隠そうとしない。彼のウェブサイトは、恐喝、殺し、売春を法外な料金で請け負うと宣伝している。

 チェイスさんはギャングのボスだ。ただし、仮想世界の中だけの話だが。チェイスさんをはじめとする何百人ものプレイヤーは、『シムズオンライン』の「誰かになろう……自分以外に」という挑発的なキャッチフレーズに乗り、法に反する行為へと通じる道にたまらない魅力を見出したのだ。

 『シムズオンライン』は10万人近い人々がコンピューターを介して交流する人気ゲームだが、反面、反社会的な行動を助長する場ともなりつつある。その結果、たとえ大人が大多数を占めるとしても、このような新しく生まれた仮想世界での行為に制限を課すべきかどうかという問題が持ち上がっている。

オンラインゲーム『シムズオンライン』の中で法に反する行為に楽しみを覚えた人々と、それを問題視しつつ解決案を模索する開発サイドのお話。このコラムを見る限りでは、開発もとのマクシスが、プレイヤーの参加を一時的に停止したり、アカウントの使用を禁止することでその問題に対処しているということです。

ゲームの中で他人に嫌がらせを行う行為を楽しむプレイヤーが後を絶たないというのは、これまで僕がプレイしたものでも必ずある話でした。Diablo 然り、Ultima Online 然り、EverQuest 然り。ゲームのバグを利用して作った不正アイテムで猛威を振るう cheater、他のプレイヤーを殺し回る Player Killer 、いわゆる PK。他のプレイヤーが倒したモンスターが持っていたアイテムを横取りする loot 行為。その行為の内容はゲームによって様々です。

しかしそれらが本当にゲームの楽しみを奪う大きな原因になっているのかという事に関しては、一つ反論を投げかけたいというのが僕のスタンス。こと Ultima Online に関しては PK の存在がゲームを盛り上げていた時期が確実に存在していました。

ダンジョンでの最大の危険はコンピュータが操作する魔物ではなく、人である PK、初期の頃はそんなことも良く言われていました。僕も何度も PK に身包み剥がされたりしました。しかし、PK 行為が横行してくると、その行為に歯止めをかけるべく自警団のようなものが結成されるようになります。Player Killer Killer、いわゆる PKK というものです。

はじめは PK と PKK の小競り合いが続くのですが、時期が経つにつれお互いに勢力を拡大することで一方を圧倒しようとする流れができあがりました。PK に加担するもの、PKK に加わるもの、人それぞれです。PK と PKK の争いというのは時に殺伐としていますが、その一方で、決闘の方法などにはある程度の暗黙の了解があって、お互いに仁義を通しつつそれに挑むという風習などもありました。

Ultima Online では自分の家や城を建てることができるのですが、これを拠点にして様々な集団(ギルド)がコミュニケーションを密にして活動するようになります。(もちろん PK や PKK からは敢えて無縁の世界で生活することを好む人々もいます。) お互いの基地をどうにかして潰そうとそれぞれがアイデアを練り策を張り巡らせます。ゲームの世界を飛び出てウェブサイトから情報を集めたり、掲示板でコミュニケーションを取ったり、IRC でチャットをしながら集団で行動したりといったことが当然のように行われていました。ネットワークゲームによってインターネット上の様々なツールを活用する行為は、思ったよりも楽しくないウェブやメールの世界に飽き飽きしていたネットジャンキーにとってはとてもエキサイティングな物だったと思います。

このような流れで、開発サイドから強制されたのではなく、プレイヤーたちが自ら作り上げていった世界、いわばローカルルールがゲームを盛り上げていきます。これは、人と人とが織り成すオンラインゲーム特有の現象のように思います。各個人はこういった点をあまり意識せずにゲームに没頭していたのだと思うのですが、マクロな視点で見ると、偶然と必然が折り重なって一つのエンターテイメントを作り上げていく過程がそこにあったように思えます。

時々、開発サイドからプレイヤー同士の争いを緩和する意思で、それまでなかった制限をかけたりするようなパッチが提供されることがありました。しかし、PK の行為が制限されるパッチでさえも、プレイヤーの中からは疑問の声が多く上がる場面も多かったりもしました。Ultima Online では、リリースから数年経った頃に PK 行為をほぼ完全に無力化するパッチがリリースされましたが、それによって一つ大きな楽しみを奪われてしまった多くのプレイヤーが離れていく姿がそこにありました。僕もその中の一人であったと記憶しています。

個々のプレイヤー同士が、ゲームの世界の中で作り上げていくローカルルール、ゲームを越えて密にとりあうコミュニケーション、そこがオンラインゲームの一つの醍醐味でもあります。開発側はそれを理解した上で、制限をかけて対処するのが本当に正しいのかどうか冷静に判断する必要があるでしょう。

Posted by naoya at July 12, 2003 12:19 AM | トラックバック (0)  b_entry.gif
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