June 18, 2003

流星群

[ 鬼束ちひろ ]

鬼束ちひろの曲に『流星群』という曲があります。もう一年半ほど前の曲ですが、TRICK2 とのタイアップにもなった曲なので聴いたことがある人も多いと思います。以前に紹介した『Rebel Luck』や、代表作『月光』なども良いのですが、楽曲や歌詞の完成度から見て、僕はこの流星群が鬼束ちひろの最高傑作だと思っています。

呼ぶ声はいつだって 悲しみに変わるだけ
こんなにも醜い私を こんなにも証明するだけ でも必要として

貴方が触れない私なら 無いのと同じだから

流星群の歌詞の中で最も象徴的な部分です。とても哲学的な歌詞で、自分という存在は他人にその存在を認められることでしか証明することができない。自分を確認するためには他人が必要だ。でも他人に認められれば認められるほど、同時に自分の醜さにも気付いてしまう、でもそれもまた自分なのだと認めようという彼女自身の気持ちがストレートに描かれています。「貴方が触れない私なら 無いのと同じだから」、一つの人間の真理とも言えるこの一文をスローバラードの中に綴っています。

月の光を浴びながら 〜鬼束ちひろの世界〜というサイトでは、この流星群の歌詞に関して以下ように述べられています。

私という存在が私自身の中で抱えきれず認められない。だから,「貴方」という存在を通して私という存在を認めたい。貴方が認識する「私」によって,私という存在が今ここにいる,私はこんな人間だと,私自身認識したい。それが,私がこの世で存在している証明なのだから…。

一見ネガティブに感じられる「こんなにも醜い私を こんなにも証明するだけ」という一文ですが、それも自分の一部であると("貴方"を通じて)受け入れているのがこの流星群の歌詞に見られる特徴だと言われています。それまで自分自身の内面をみて、ただひたすらに自分のことを歌ってきた彼女が、他人を認め他人を必要とすることを表現している。彼女の心の変化が見られた曲です。

『infection』リリース当時、N.Y.テロ事件が起き、奇しくも infection の歌詞に含まれた「爆破して飛び散った」という一文がテロ事件を彷彿させるということで、名曲といわれた infection は自主規制の下に封印されることとなりました。彼女にとってこの出来事は精神的にかなりダメージが大きかったようで、その落ち込みようは相当なものだったそうです。そんな精神状態の時に生まれたのがこの流星群で、本人自身がなぜそんな底辺からポジティブな詩が生まれたのかが不思議だったと語るエピソードがあります。

「貴方に触れない私なら 無いのと同じだから」、このフレーズを聴くたびに少し自分自身を振り返ったりすることができる素晴らしい曲です。

Posted by naoya at June 18, 2003 02:36 AM | トラックバック (0)  b_entry.gif
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